ボスニア・ヘルツェゴビナの子供水泳クラブで、ある少年がみなに勇気を与えています。
イズマル・ザルフィク君(7歳)は、両腕がないにもかかわらず水泳大会で金メダルを獲得!彼は、たとえ両腕がなかったとしても、人は十分に泳ぐことが出来るということを証明し続けています。
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生まれながらに両腕がなかったイズマル君
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ボスニア・ヘルツェゴビナでは、2〜9歳までの子供の6.5%が何らかの障害を持って生まれてくると言われています。
ボスニアの経済は、あまりいいとは言えず、そのため障害のある子供たちへの対応可能な施設が不足し、福祉サポートが制限された社会で疎外感を感じながら生活を送らなければいけないのが現状です。
イズマル・ザルフィク君は、脚が変形し、両腕がない状態で生まれてきました。食事やものを書くときなどは、背中を曲げなければなりません。そのため、彼の背中には相当な負担がかかってしまうのです。
イズマル君の両親は、背中のセラピー治療のために彼に水泳を勧めたのですが、当然、彼は水に入ることを怖がりました。しかし、イズマル君は、あるスポーツ選手に出会ったことで彼の人生は大きく変わったのです。
水への恐怖を乗り越えチームのキャプテンに
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スポーツ選手のアメル・カポさんは、2015年からサラエボ市内で障害を持つ子供たちのために無料で水泳レッスンを提供する「Spid」を立ち上げて、コーチとして教えていました。
イズマル君は、サラエボ市内から北へ70km離れたゼニツァという街に住んでいますが、彼の父イズメットさんが遠く離れたサラエボの市営プールまで、車で週に2回、イズマル君を連れて行っています。
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ゼニツァの鉄工所で働く父親のイズメットさんにとって車のガソリン代を払うのも大変ですが、イズマル君に水泳を続けて欲しいという願いから「spid」が援助してくれているのです。
そうして、初めは水に入ることすら怖がっていたイズマル君でしたが、水泳教室に通ううちにどんどん水に慣れ、数ヶ月後にはジャンプ台からダイブできるほどまでになりました!
さらにイズマル君は、オリンピック競技用サイズのプールを1人で泳ぎ切るまでに成長し、1年後にはチームのキャプテンになったのです。
そして、クロアチア共和国のザグレブで行われた障がい者水泳大会の背泳ぎ部門で、自分よりもはるかに年上の選手が出場する中、見事、金メダルを獲得しました。
出来ないことより出来ることを伸ばす
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父親のイズメットさんは、
「息子が水泳を始めてからというもの、表情が明るくなりよく笑うようになりました。これは、決してお金で買えるようなものではありません。私は、彼から多くの事を学んでいます。彼は本物のファイターです」と話しています。
しかしながら、水泳教室「spid」がサラエボの市民プールを使用するには、1ヶ月に日本円で約10万円の料金がかかっています。残念ながら国や市からの援助金はまったく出ないのですが、国際援助団体や地元企業がspidへ寄付しているようです。
アメルさんは、障害を持った子供たちの能力を見いだして、それをサポートし続けています。
「障害を持った子供たちの体は、確かに健常者とは異なります。しかし、それを子供たちに受け入れさせ、どうやって自分の体を自分なりに使うことが出来るのか ?それを確かめ証明するチャンスを与えるのが、この水泳教室なのです。私のゴールは彼らを世に送り出すことです」
イズマル君は、去年から小学校に通い始めました。水泳によって自分に自信を持つことが出来るようになった彼は、これからどんなことにもチャレンジしていくことでしょう。
私たちには、彼から学ぶべきことが数多くあるはずです。