あなたは「クリーンミート」というものをご存じですか?綺麗な肉?なんだそれは?と思った方も多くいるでしょう。このクリーンミートが将来、私たちの肉食文化に大きな変化をもたらすかもしれないのです。
今回は、あなたが知っておかなくてはならない「クリーンミート」についてお話しします。
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クリーンミートとは?
クリーンミートとは、動物の幹細胞を抽出し、培養して作る「人工培養肉」のことです。
もう、聞いただけでぞっとしている人もいるでしょう。しかし、このクリーンミートが将来、私たちにとって重要な食料供給源になるかもしれないのです。

ご存じの通り、現在私たちは「肉」を家畜動物たちから得ています。牛、鶏、豚などの生きた動物たちからです。
食用肉として育てられる動物たちは、早く太らせるために栄養たっぷりな食事を与えられ、スペースの問題からあまり動くことが出来ず、時にはギュウギュウ詰めの状態で飼育されます。
そして、彼らは普通の寿命よりはるかに短い期間で屠殺、解体、ラッピングされてスーパーに並びます。
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これは本当に大まかに説明しただけです。家畜動物たちは、本当に過酷な環境で育てられ続けています。
糞まみれの牛舎で育てられ続ける牛たちや燃料代がもったいないからと、すし詰めを越えてトラックに荷積みされて苦しさのあまり死んでしまう豚たち。
さらには、病気になっているにもかかわらず死骸をそのまま放置されている鶏たちなど、問題を挙げ出せばきりがありません。
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それらは倫理問題にも繋がり、家畜関係業者の方々は動物愛護団体から批判され続けています。
トラブルを避けるためか、TV番組ではあまりそういうことは放送されません。
私は、酪農家、並びに食用肉加工業者の方々を批判するつもりはありません。それらの業者の方々は、消費者に要求に答えるために効率化を進めた結果なのです。もとをたどれば私たちが悪いのです。

私は、肉を食べるときはその肉の動物たちに感謝し、その肉に関わった人たちに感謝しながら毎日大切に食べています。当然のことですよね。
クリーンミートの可能性
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クリーンミートは、家畜動物たちにとってかわるかもしれない食料供給源として、欧米ではここ数年非常に注目を浴びています。
ビル・ゲイツやリチャード・ブランソンといった著名人もクリーンミート開発に資金を投じています。
クリーンミートを作る方法は、幹細胞を使った再生医療などと基本的には同じで、鶏や豚、牛などの家畜の幹細胞から作られた筋肉細胞を培養し、増殖させ、ミンチ肉を作り出すのです。
現在、およそ9週間ほどの培養で、ハンバーガーほどのパテが作れるということです。まだまだ生産速度は実質的な数字ではなさそうですね。
しかし、クリーンミートを研究している会社の1つ「JUST」社は、2018年末までにはアメリカやアジアなどのレストランでナゲットやソーセージ、フォアグラといった料理を提供することを目指しているとのこと。
下はJUST社のCMビデオです。映像の後半に出てくるナゲットは、どうやらクリーンミートで作られているようですね。食べてみたい!
他のメーカーでも、2021年頃までにはクリーンミートをスーパーマーケットの食品棚に並べることを目指しているとのことです。
こちらの動画は、Maastricht Universityが研究しているクリーンミートをTV番組で試食してもらっている映像です。8分43秒くらいから試食が始まります。
しかし、当然ながら消費者の抵抗感は強いでしょうね。
動物性たんぱく質のすべてを食べないヴィーガンやベジタリアンの中にはクリーンミートを歓迎している向きもあるみたいですが、一般的には実験室で人工培養された肉を食べたいと思う人は少ないでしょうね。
私は機会があればすぐにでも試食してみたいです!
クリーンミートのメリット
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クリーンミートのメリットの1つに安全性があります。食肉の場合は、生産や加工の過程で食中毒の原因となる病原体が混入する危険がありますが、クリーンミートはその危険性を減らせると言われています。
さらに、2011年の英オックスフォード大学の研究によれば、クリーンミートは食肉用家畜を飼育することに比べて以下の4つの項目を削減できると発表しています。
1,温室効果ガス排出量を96%カット
2,土地利用を99%カット
3,水使用量を従来の肉よりも96%カット
4,エネルギー消費量を45%カット

加えて、家畜動物たちに使用する化学物質や抗生物質などの影響も気にしなくていいですし、オメガ3脂肪酸などの健康成分をクリーンミートに含ませることも可能なのです。
そして、もちろん家畜動物たちに苦しい思いをさせなくて済みます。家畜動物たちは排泄物にまみれて、一日中、いえ、一生狭い小屋の中で、大量の餌と一緒にわけのわからない薬を投与されずに済みます。
クリーンミートのデメリット
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クリーンミートのデメリットと言えば、先ほど言った「人工培養肉だ」という先入観ですが、それはいつか克服できるでしょう。人間は慣れる生き物ですから(笑)
加えて、価格の問題もあります。
2013年にMark Post氏という方が発表した世界初のクリーンミートのハンバーガーは33万ドル(およそ3400万円)だったのですが、今後市場に出回るとなったときは、ハンバーガー1個で11ドル(およそ1200円)ほどを見込んでいるようです。
やはり今のところはちょっとお高いですね。今後、クリーンミート食が広まれば価格ももっと落ち着いていくでしょう。
まとめ
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クリーンミートの商業化するにはまだまだ時間がかかるでしょうね。でも、多くの専門家は、従来の畜産生産に比べてクリーンミートははるかに資源効率が高くなると考えているようです。
現在、世界の人口は右肩上がりで上昇し続けています。その中でも日本は降下中ですがf^_^;)とにかく、この人口増加に対応するのに畜産生産には限界がある、ということです。
家畜への倫理問題や、家畜のおならや排泄物から出るメタンガスでの環境汚染問題も深刻です。
色々な点を踏まえた上で「クリーンミート」という新しいタンパク源は、将来、私たち人類を救う重要な食材になる可能性を秘めているということがわかりました。
いつの日か、食用家畜の映像を見て私たちは「そんな時代もあったね。動物たちにひどいことしてたよね」と言う日が来るかもしれませんね。