ワラウクルミ

英2歳児殺人事件描いた映画を製作するも当事者家族に連絡せず問題に

英2歳児殺人事件描いた映画を製作するも当事者家族に連絡せず問題に

1993年に、イギリス北西部リヴァプールで2歳児ジェイムズ・バルジャーちゃんが、2人の10歳少年誘拐・殺害され、イギリスに衝撃を与えた事件。

それを題材にした短編映画が、今年のアカデミー賞短編映画部門にノミネートされた。

しかし、この映画を製作した監督は、製作することを当事者家族に伝えておらず、監督と家族の間で問題となっている。

人が本来持つ倫理は、芸術ほど重要ではないのだろうか?

10歳の少年2人が2歳児を殺害した事件が題材

アカデミー賞候補にノミネートされた「拘束(Detainment)」は、1993年にイギリス・リヴァプールで起きた2歳のジェイムズ・バルジャーちゃん殺人事件を描いた30分の短編映画だ。

犯人は、当時10歳ロバート・トンプソン少年とジョン・ヴェナブルズ少年。。。。。確かに、この設定だけでも十分に人の関心を惹く物語になりそうではある。

内容には、警察による少年たちへの実際の事情聴取が使われており、より臨場感・緊迫感あるものに仕上がっているようだ。

しかし、ここでとんでもない問題(筆者が個人的に思う)が持ち上がっているのだ。

なんと監督であるヴィンセント・ラム氏(Vincent Lambe)は、ジェイムズちゃんを失った当事者であるバルジャーさん一家に、何の連絡もなしにこの映画を製作したというのである。

当然のことながら、ジェイムズちゃんの家族はこの映画のアカデミー賞からの辞退を監督に求めた。しかし、監督は候補の辞退をすることはないと答えている。

アメリカ映画芸術科学アカデミーは、家族の訴えを「重く受け止める」としたものの、候補の取りやめは行わず、審査員がそれぞれの判断を下すと発表した。

なぜ事件当事者に了承を得なかったのか?

「芸術」とは、社会のあらゆるべきことに立ち向かう権利を持つ。例えそれが他宗教を揶揄する物でも、社会批判するような物でも、それが「芸術」という枠組みに組み込まれているのであれば、それを公共に持ち出すことが出来る。

もちろん、その国ごとの法律に違反しないかどうかを除いてではあるが。

しかし、私たちは同時に人間が本来持つ「倫理」というものを大切にしなければならない。

今回の倫理としては、「事件当事者のことを気にするべきかどうか?」ということになるだろう。

動画内で監督は、

「『犯人の少年たちが本来は悪くないのでは?』という考え方を持つ人たちは批判される現状があり、実際に映像として洗い出すことで、事件で何が起こったのかということをそれぞれが考え直すきっかけが作れると考えた。」

というようなことを語っていた。

確かにうなずける製作理由だと思う。

 

しかし、なぜ、当事者の家族に了承を得なかったのだろう?

 

日本ならおそらく当事者家族の許可を得られない限り、映画製作すること自体が無理なはず。イギリスでは違うのかな?

そしてもし、当事者家族が監督を訴えたら、どちらに軍配が上がるのだろう?おそらく当事者家族はそんなことをする気力すら持ち合わせていないだろう。

なぜなら、彼らは自分の息子を失っているのだ。その現実が彼らにもたらす苦悩の質量は、私には計り知れない。

芸術と倫理、どちらが重要か?

photo by Daily Star

そしてそれは、映画を製作した監督も十分分かっていたはずだ。分かっていたはずなのに、まるでそのことに対しては無関心を装うかのように、ただただ芸術性の在り方についてばかりを述べている。

もちろん一端作ってしまった物を、広く公開する前に取りやめにすることで、出演者たちへの責任も考えているのかもしれない。

しかし、アカデミー賞候補くらいは辞退してもいいのではないかと思う。もしかしたら当事者家族も映画は公開してもいいが、アカデミー賞候補だけは辞退して欲しいという考えかもしれない。

それでも、監督は賞候補を辞退しない。

アイルランド出身のヴィンセント・ラム監督(39)は、これまでいくつかの映画を手がけてきてはいるものの、大成功しているとは言いがたい。

「名を挙げるこの千載一遇のチャンスをみすみす捨てることが出来ない」と見られても仕方がない。

photo by Variety

 

「芸術」は「倫理」よりも重要なのか?

 

これが今回の論点だろう。あなたなら、これをどう考えますか?

私としては、「倫理」は人の輪を繋ぎ止めるものと考えている。しかし、一端倫理がなくなってしまえば、人の輪は千切れ、分裂し、バラバラになってしまう。そして、人はどこにもいなくなってしまう。

そんな人のいなくなったところに、いったい「芸術」の何の意味があるのだろう?

 

そんなものただの自己満足だ。

 

すべてにおいて、監督の初動の不手際さに責任があると思う。当事者家族に映画を製作したい旨を何度も伝え、難しいなら映画の収益をご家族に分配、もしくは児童福祉関連団体に寄付という形でもいい。

本当に映画を製作したいならそれくらいしてもいいはずだ。

しかし、監督は自らの芸術欲だけに溺れ、倫理をないがしろにしてしまった。

当事者のバルジャーさん一家のことを考えると本当に胸が痛い。

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