みなさんの考える仏像の中身は、空洞もしくは金属という風に考えている人がほとんどだろう。
しかし、世界には本物の人間をミイラにして、それを仏像の中に入れたものも存在するのだ!
今回は、そんな『即身仏』の仏像について話していこう◎
仏像の中に人間のミイラを発見
2015年2月、オランダのドレンテ博物館が所有していた仏像に違和感を感じたスタッフは、試しに仏像をCTスキャンにかけてみた。
photo by boredpanda
すると、その中には1100年前に死亡したとされる僧侶のミイラが入っていることが判明したのだ!
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このミイラの正体は、宋朝の高僧「柳泉」、もしくは「Liuquan」と呼ばれる位の高い僧侶ではないかとされており、瞑想やお経を唱え続けて絶命し、そのままミイラになった「即身仏」を銅像の中に入れたのではないかと考えられている。
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究極の食事制限を2000日間続ける
即身仏とは、衆生救済を願い厳しい修行の末、自らの肉体をミイラにして残した僧侶のこと。即身仏になるためには、三段階の修行がある。
まず第一段階として食べ物を木の実や種、果物などカロリーの低いものだけにし、それと同時に山ごもり修行を行う。これを1000日間行うことで、あらかたの脂肪は体から消えていく。
そして第二段階は、木の皮や根を食べてさらに食事制限する「木食行」を行い、脂肪だけでなく筋肉までもそぎ落としていくのだ。
そうしたものを体から排除することで、ミイラ後の腐敗を防ぐという。これを1000日間、ひたすら瞑想をしながら続ける。
さらに時として僧侶は、食器などを美しく見せる天然の塗料「漆」を飲むことさえあったそうだ。
漆は、非常に毒性が高く、利尿や発汗、嘔吐といった作用があり、体の水分をさらに絞り出して、ミイラ化へ向けた理想のコンディションを作り上げて行ったのだ。
地中の石棺の中で1000日間閉じ込められる
そして、文字通り骨と皮だけになった僧侶は、地下3mに作られた人一人がやっと座れるほどの石棺に入り、上から蓋をされ、土をかけられる。
これを「土中入定」と呼び、竹筒で空気孔を作っているだけのその石棺で僧侶は、ひたすら鉦(【しょう】お坊さんが打ち鳴らす金属製の楽器)を鳴らし、お経を唱えるのだ。
そして、最後の1000日間は、この世から成仏した僧侶を石棺の中でミイラ化させる期間。
こうして、僧侶は即身仏となっていく。
しかし、これまで多くの僧侶がこの修行に挑戦したものの、即身仏となったのはわずか20数件程度で、あとは途中で断念したり、死後腐敗してしまいそのまま石棺に入ったまま埋められたりした。
これは日本の場合であり、海外では自然に瞑想中になくなった僧侶の遺体を、こうした仏像に入れることもあるのだそう。
敬意を持って手を合わすこと
photo by The Siberian Times
モンゴルのソンギノ・ハイルハンでも、2015年1月27日にチベット仏教僧の即身仏と見られるミイラが発見されている。
どうやらこのミイラは、200年以上前に即身仏になったと推測されており、牛革で包まれていたお陰で保存状態も非常に良好で、足を組んだ瞑想のポーズの状態で発見されたという。
photo by The Siberian Times
チベット仏教の信者たちは、この即身仏は今現在も生きて深い瞑想の中にあると信じており、さらに時がたつと「仏陀」になるのだと考えている。
著名な作家である村上春樹氏が小説「騎士団長殺し」の中で即身仏について書かれていたのも記憶に新しい。
僧侶たちが苦行の末に見えたものは、私たちには見通すことが出来ないが、この即身仏となった僧侶たちの拝むことでその意思をくみ取ることが出来るかもしれない。
もし彼らを拝むことが出来たその時は、敬意を持って手を合わせたい。