ワラウクルミ

指を9本失った登山家『栗城史多』さんが8度目のエベレストで死去

栗城史多

2012年、4度目のエベレスト挑戦時に負った凍傷が原因で、両手の指9本を失った登山家の栗城史多(くりきのぶかず)さん(35歳)が、2018年5月21日8度目のヒマラヤ山脈のエベレスト(標高8848m)の登山中に死亡しました。

栗城さんは、『日本人初となる世界七大陸最高峰の単独無酸素登頂に挑戦』という文言を発信していたことで有名ですが、同時に彼は、著名な登山家たちから否定され続けていたことでも知られていました。

今回は、栗城史多さんについてです。ネット上で、栗城さんに対しての否定的な意見が溢れる中、出来るだけ中立な立ち位置で彼について話していこうと思います。

thumbnail photo by 栗城史多 “Share the Dream”

8度目のエベレスト挑戦が…

ネパールと中国の国境上にあるヒマラヤ山脈系の世界最高峰『エベレスト』(標高8,848m)。別名、チョモランマサガルマータとも呼ばれています。

エベレストphoto by Steven dosRemedios

栗城史多さんは、2018年4月17日に日本を出発後、27日にネパール側のベースキャンプに到着。5月5日から登山を開始し、20日に7400メートル付近まで到達したのですが、体調不良で下山を余儀なくされていました。

21日未明、キャンプ2にいるスタッフに下山の意思を伝える無線連絡があった後、音信不通となり、朝になってキャンプ2にいたシェルパ(編注:ヒマラヤ登山の案内人)や撮影隊が栗城さんのルートを辿って捜索したところ、キャンプ3で低体温で息絶えた姿で発見されてしまったのです。

35歳という若さでした。

今回の8度目のエベレスト登山スケジュールをめぐっては、「性急ではないか?」という議論があったようです。

エベレストは一般的に、現地入りしてから体を順応させながら、2か月ほどかけて登頂を目指すとされています。しかし、栗城さんのブログには、

『今回の挑戦は4月18日に日本を出発し、5月21日に登頂予定』

と書かれていました。2017年の7度目のエベレスト挑戦の際も、4月10日に現地入り、5月23日に登頂予定としていました。いずれも1か月程度でスケジュールが短すぎました。

それを今言ったところで亡くなってしまった栗城さんは、もう二度と戻ってきません。

栗城史多さんの経歴

栗城史多photo by 栗城史多 “Share the Dream”

栗城史多さんは、1982年6月9日北海道に生まれました。

栗城さんは、札幌国際大学1年時に2歳年上の恋人にフラれてしまい、その悲しみを振り切るために大学の山岳部に入部します。

そして、2002年、彼が20歳の時に中山峠から小樽市の銭函まで、1週間程度の雪山の年越し縦走(標高1,000m前後)を参加し見事完走。登山を始めて間もないにもかかわらず、素晴らしいですね!

そして、2年後の2004年6月12日には、北米最高峰の『マッキンリー』を登頂(標高6,194m)。

栗城さんはここで、マスコミの取材にあい、「登山家」としての道を歩み始めます。

2005年1月には、南米最高峰の『アコンカグア』を登頂(標高6,959m)。

同年6月には、ヨーロッパ最高峰の『エルブルース』を登頂(標高5,642m)。

続けて10月には、アフリカ最高峰の『キリマンジャロ』を登頂(標高5,895m)。

2006年10月には、オセアニア最高峰の『カルステンツ・ピラミッド』を登頂(標高4,884m)。

2007年5月には、ヒマラヤ山脈系の世界第6位高峰チョ・オユー』を登頂(標高8,201m)。

同年12月には、南極大陸最高峰ビンソンマシフ』を登頂(標高4,892m)。

登山家として、着々と記録を積み上げて行きました。

栗城史多photo by 栗城史多 “Share the Dream”

2008年10月、栗城さんは、ヒマラヤ山脈系で世界第7位の高峰である『マナスル』(標高8,163m)に「無酸素」、「単独」登頂したと主張。しかし、ヒマラヤン・データベースや日本山岳会から登頂を認定されませんでした。

2009年5月、ヒマラヤ山脈系の世界第8位高峰ダウラギリ』を登頂(標高8,167m)。インターネット生中継を行い注目を集めます。

同年9月、世界最高峰エベレスト』(標高8,848m)の1度目の挑戦は、7,950mで敗退

2010年5月、ヒマラヤ山脈系の世界第10位高峰アンナプルナ』(標高8,091m)へ挑戦するも、7700mで敗退

同年8月末から、2度目の『エベレスト』に挑戦するも7,750mで敗退。この挑戦で、栗城隊のシェルパが1人死亡しました。

2011年5月、ヒマラヤ山脈系の世界第14位高峰シシャパンマ』(標高8,013m)も7600mで敗退。同行スタッフであるフリーカメラマンの木野広明さんが死亡しました。

同年8月末から、3度目の挑戦となる『エベレスト』は、7800m地点で敗退

そして、2012年5月、1年前に失敗したシシャパンマ』登頂を目指したが、7000m地点で敗退

同年8月末には、『エベレスト』に4度目の挑戦。しかし、7700mで敗退このときに負った凍傷が原因で、両手の指9本を失ってしまいました。

栗城史多photo by 栗城史多 “Share the Dream”

しかし、2014年7月24日、世界第12位の高峰である『ブロード・ピーク』を見事登頂( 標高8,047m)。復活を見せます!

2015年8月末に、5度目の『エベレスト』登山は失敗

2016年5月、6年前に敗退したアンナプルナ』も6300m地点で断念

同年9月より6度目の『エベレスト』は7400mで敗退

2017年春、7度目の『エベレスト』も6800m付近で断念

1度目のエベレストに失敗した頃から、途中断念の記録が続いています。それだけ、8000m級が山々が異次元だということがよくわかりますね。

指9本を失ってもなお『高峰』と呼ばれる山にチャレンジするのは、やはり無理があったのでは?と思わざるを得ません・・・・・・

いろんなネット上の「嘘」の噂

栗城史多photo by 栗城史多 “Share the Dream”

まず、最初の栗城さんが20歳の時に登ったマッキンリーは、6月のベストシーズンで、他の登山客もたくさんいて、そこまで凄くなかったと言われています。

しかしながら、例えば今、私が「6,000m級の山に登って下さい」と言われたら、絶対に無理です。なので、登頂したということは、純粋にすごいことだと思います。

ただネット上で大きな問題になっているのは、栗城さんの「単独・無酸素登頂」です。2008年のマナスルへの無酸素単独登頂は、ヒマラヤン・データベース、日本山岳会の双方から登頂を認定されていません

マナスルを実際に登頂していないのでは?という噂も流れています。

登山界での『単独』の定義は、「ベースキャンプの先は第三者のサポートを受けずに登り切ること」という意味を持つのに対し、栗城さんの場合は「自分の荷物を自分で背負うこと」と解釈しているようです。

その2つには、確かにかなりの差がありますね。

『無酸素』に関しても、栗城さんが挑戦してきたエベレスト以外の山はどれも無酸素が当たり前な山ばかりであり、8度挑戦したエベレストはいずれも酸素が必要な高度まで登れていないそうです。

なので『世界七大陸最高峰の単独無酸素登頂に挑戦』というのは、単なる聞こえの良い文言だと、ネット上で叩かれるようになってしまったのです。

これを受け、栗城さん側は、これまでネット上に掲載されていたそれらの証拠動画や画像を削除してしまいました。

もしかしたら栗城さんは、登山家を始めた当初、よく分からず『単独・無酸素登頂』という言葉を使ってしまい、それから引くに引けなくなってしまったのかもしれません。

個人的には、『単独・無酸素登頂』という言葉的にも、現実的にも危険なものにこだわるのではなく、普通に『登頂』でも十分すごいと思いますがf^_^;)それではメディアウケしないからダメだったのでしょうか?・・・・・・謎ですね。。。

8度目のエベレスト挑戦の様子も『Abema TV』で生放送される予定だったようで、もしかしたらマスコミへのアピールとして、仕方なくその看板を背負い続けなければならなかったのかもしれません。もしくは、マスコミに踊らされてしまっていたのか・・・・・・

ファンからの期待も当然あったでしょうし、もしかしたらそういった重圧が栗城さんを追いつめていったのかもしれません・・・・・・

2012年8月の4度目のエベレスト挑戦で、栗城さんは右手親指以外のすべての指を失ってしまいました。

しかし、そのとき指ぬき手袋をして登山していたことが指の凍傷に繋がったのでは?とネット上で言われています。

でも、実際に登山する人が指ぬき手袋で登山するとはどうしても思えません。やはりこれについても謎のままです。

2011年9月から吉本興業グループの『よしもとクリエイティブ・エージェンシー』と業務提携しており、そのことまでネット上では叩かれています。「遂に栗城もお笑い入りか?」などと書かれたりしていました。

登山には、資金が必要であり、どんな企業と業務提携しようが栗城さんの自由です。そんなことまで叩かれる所以はまったくないと私は思います。

プロ登山家たちの実際の意見

栗城史多photo by 栗城史多 “Share the Dream”

栗城さんは、他のプロ登山家たちから敬遠されていたと言われています。登山業界自体も彼を取り上げることはほとんどありませんでした。理由は、もちろん『単独・無酸素登頂』という彼の代名詞です。

プロ登山家たちや登山業界は、栗城さんの掲げていたその代名詞を『いつわり』としており、それを掲げ続けている栗城さんを登山家として認めなかったのです。

プロ登山家たちの実際の言葉はこちらです。

■服部文祥(サバイバル登山家、山岳雑誌「岳人」編集者)
『栗城君は全然駄目。市民ランナー的で登山家としては3.5流で僕よりも下。登山家じゃないですよ。登山家を語ると本当に登山を目指した人に失礼です。』

■森山憲一(登山ライター、ブログ・森山編集所)
『判断はずっと保留してきました。ただし、そろそろひとこと言いたい。さすがにひどすぎるんじゃないかと。どうしても看過できない嘘は、彼は本当は登るつもりがないのに、「登頂チャレンジ」を謳っているところです。』

■登山専門誌「山と渓谷」2012年3月号
『彼は「単独・無酸素」を強調するが、実際の登山はその言葉に値しないのではないかと思う。一般の人たちにヒマラヤ登山を正しく理解してもらうためには、もう少し厳密な情報発信が必要なのではないか。』

■竹内洋岳(日本人初の8000メートル峰全14座の登頂者)
『恐らく、この栗城さん自身は「単独」とか「無酸素」とかの意味をそこまで深くは考えていなかったのかもね。たぶん、彼の周りにいる大人がなにか「美味しい都合」で、いろいろ脚色したんじゃないかな?』

■池田常道(山岳雑誌「岩と雪」元編集長)
『マナスル登頂者のなかには、手前のコブを「認定ピーク」と呼んではばからない人物がいる。頂上ではなく認定ピークに登ったということは、頂上手前のコブで敗退したのと同義なのだが、そういったレベルの登山者が無酸素・単独登頂の成功者としてメディアに登場するご時勢なのだ。』

■山田淳(七大陸最高峰の元最年少登頂記録保持者)
『NHKも、おいおいちょっと待てよ、って思わなかったのかなぁ。不思議です。』

■近藤憲司(国際山岳ガイド、エベレスト7回登頂)
『勉強しないのにお金をもらって東大を受け続けているようなもんだ…』

まとめ

栗城史多photo by 栗城史多 “Share the Dream”

山は本当に偉大です。超自然の前では人間の命なんて、本当にちっぽけです。

私は、トレイルランニングなら少しかじったことはありますが、高峰と呼ばれるような山へ登山しようと思ったことは今まで一度もありませんし、これからもしたくありません。

私は、それに立ち向かう勇気すら持っていないです。

栗城史多さんは、何はともあれ多くの山を実際に登ってきました。それは事実です。それについては、誰も否定することが出来ません。

指のほとんどを失い、多くのバッシングが飛び交ってもなお、彼は山へ挑戦し続けました。それは本当に凄いことだと思います。

しかしもし、栗城さんが掲げた『単独・無酸素』という代名詞に誤解があったのなら、正直に真実を語って欲しかった・・・・・・

そうすることで、彼への疑念も晴れて、無理に結果を焦らず、マスコミから追い込まれることもなく、自分のペースで心ゆくまで山に挑戦することができたはずです。

私としては、すでに指を9本失いハンデを負っている栗原さんには、『単独・無酸素登頂』にこだわらず、エベレスト登頂を終え、無事に下山してきて欲しかったです。

心よりご冥福をお祈りいたします。

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