ワラウクルミ

シリア内戦のわかりやすい経緯と化学兵器がもたらす惨状について

みなさんは、2018年4月現在も続くシリアの内戦を日頃の生活の中で考えることはあるでしょうか?

私は恥ずかしながらほとんどありません。

おそらくですが、日本に住む多くの人々は、他国で行われている戦争を日々の生活の中で思い出すことはほとんどないのではないでしょうか。

先日の7日、シリアの首都ダマスカス近郊東グータ地区化学兵器を使用したと思われる空爆があり、子供を含む約49人が呼吸困難などの症状で死亡しました。

今回は、シリアで繰り広げられ続けている内戦の経緯と現状をご紹介していきます。

革命運動『アラブの春』が泥沼化

まずは「シリアの内戦って何がどうなってこうなっているの?」という人のために、簡単にですが事の経緯をまとめてみましょう。

事の発端は2010年12月17日チュニジア中部で失業中だった26歳モハメド・ブアジジが果物や野菜を街頭で販売し始めたところ、販売の許可がないとして警察にすべて没収されてしまいます。

これに抗議するために、彼は頭からガソリンかシンナーをかぶり火をつけて焼身自殺を図りました・・・・・・聞くだけで怖ろしい話です。

当時、チュニジアでは失業率が14%以上であり、青年層に限ると25〜30%と非常に高かったのです。

ブアジジの事件は、Facebook上ですぐさま話題になり、若者の失業者たちを中心に「職の権利」「発言の自由」「大統領周辺の腐敗の罰則」を求めて、チュニジア各地でストライキやデモが起こったのです。

arab springphoto by Democracy Chronicles

そして、23年間ものあいだ独裁政治をとっていたベン=アリー政権を崩壊させ、チュニジアは民主化へと歩み出します。チュニジアはジャスミンの産地として有名であり、そこからこの革命は『ジャスミン革命』と名づけられました。

チュニジアの近隣国の多くは、チュニジアと同じように独裁政治が政権を握っていましたが、このチュニジアの革命を目の当たりにした近隣国の国民たちは「自分たちもやれるんじゃないか?」という思想が高まり、アラブ諸国の各国でデモやストライキが始まります。

 

これを『アラブの春』と言います。

 

(「アラブの春」によって抗議運動や暴動が起こった地域↓)

アラブの春

photo by Wikimedia Commons

まだ部族の集まりでしかなかった時代。これらの地域では、石油などの資源が豊富であり、欧米諸国がそれらの利権を得るために部族の族長に肩入れをしていきました。そうすることで、族長が国民を掌握する独裁政治がどんどん生まれていったのです。

そして、このアラブの春はいくつかの国で実際に革命を起こしていきます。

2011年2月11日エジプト30年間独裁政権を取っていたムバーラク政権が崩壊。

リビアも、内戦をへて、2011年8月24日42年間に及ぶカダフィ政権が崩壊。

2012年2月21日イエメンでは33年間独裁政権を取っていたサーレハ体制が終焉。

これらの国では、政権は奪還したものの民主化に成功したのはチュニジアだけで、他の国々で起こったストライキやデモなどは、政府に鎮圧されてしまいました。

そしてシリアは、この『アラブの春』のデモが肥大化し、未だに泥沼化しているということなのです。

ややこしいシリア内戦の見取り図

まずは、『BBC NEWS JAPAN』が非常にわかりやすく、混乱を極めるシリア周辺情勢をまとめてくれていますのこちらをご覧下さい。

・・・・・・分かりやすいはずなのですが、もう何が何だかさっぱりって感じですね(笑)
要するに、

「シリアの内戦は、多くの国々が、それぞれ自国の利権を得られる側に加勢している」

ということなんです。簡単すぎたかもしれないですが、これが大前提です。要するにシリアで起こっている惨状は「代理戦争」ということなんです。シリアの原油の魅力や、はびこるテロ組織の壊滅等々。

とにかく色々な国が、この内戦にごちゃごちゃと入り混ざっているので一つ一つは説明できませんが、簡単に説明すると、

アサド政権率いるシリア政府軍には、ロシア、イラン、ヒズボラというレバノンの政治組織が支援しています。

反政府勢力軍には、アメリカ、トルコ、サウジアラビア、カタールが支援しています。

最初は、この2つの勢力が戦い、各国はそれぞれの支援側へ物資や燃料、武器などを支援し兵士を訓練していきます。

しかし、そこに新たな第三の勢力イスラム国(ISIL)」「ヌスラ戦線」「クルド民主統一党」などが、国内の混乱に乗じてさらにシリア国内を混乱させていきます。

そして、シリア国内は破壊し尽くされ、多くの難民を生み出しました。現時点で60万人以上の死者が出ているとされており、その中には現地で医療に当たっていた750人以上のお医者様を含みます。

息をすることもままならず泣き叫ぶ子供たち

2018年4月7日化学兵器と思われる攻撃によって被害を受けた子供たち。

シリアの首都ダマスカス近郊にある東グータ地区は、反政府勢力の拠点でした。アサド政権は、東グータ地区の9割以上を制圧し、7日も残りの反政府勢力が潜伏していると思われる地域に激しい空爆を行いました。

空爆後、現地で救援活動を続ける民間防衛隊『ホワイト・ヘルメット』によりますと、これまでに500人以上が呼吸困難に陥り、塩素のような臭いもしたとされています。

反政府勢力側は、アサド政権が化学兵器を使用したと非難しましたが、政権側は例のごとく完全否定しています。アサド政権を支援するロシアも「偽情報だ」として、政府軍の化学兵器使用を否定しています。

このことを受けて、トランプ米大統領は、アサド政権側による化学兵器の使用があったと見なし、「アサド政権は大きな代償を払うことになる」と警告し、昨年の4月に続いてミサイル攻撃などに踏み切る可能性を示唆しました。

アサド政府軍が本当に化学兵器を使用しているとしたら、それは国際的にも人道的にも許されざる行為です。

上の動画の子供たちをもう一度思い出して下さい。

神経毒のせいで放心状態になっている子供もいますし、息をすることすらままならないんですよ。ああ、本当になんてことだ・・・・・・

しかし、今のシリアは戦時中です。誰がやったという明確な確証を得ることは非常に難しく、憶測や推測では決定的な判断を下すことが出来ないのです。

昨年2017年4月4日には、北西部イドリブ県ハンシャイフンで猛毒神経ガス・サリンが使用され、約90人が死亡しました。

国際連合と化学兵器禁止機関(OPCW)はアサド政権軍が実行したと結論付けたのですが、政権側は「でっち上げだ」と否定しています。

上の動画のアブドルハミード・アルユセフさんは、1歳に満たない幼い双子と妻のほか、自分のきょうだいを含め親類19人を一度に失ってしまいました。

このむごたらしさを表現する言葉が見つかりません・・・・・・

2018年3月20日の映像で、アサド大統領は自分が運転する自家用車で非難した住民がいる場所まで赴きます。彼を支持する国民が相当数いるのは確かなんです。

政府軍と反政府勢力軍、どちらが正義なのかは誰にも分かりません。しかし、これだけは確かなことです。

どちらが勝っても負けても、失ったものはもう二度と戻ってこない。

その現実だけは動かすことが出来ません。

冒頭でも言ったように、私たちは彼らとは遠く離れた平和な場所に住んでおり、彼らの悲惨な現状を思い出すことはあまりありません。そして、もし思い出したとしても我々一般国民が手を差し伸べる術はまるでありません。

しかし、彼らの現状を知ることで、自分が小さな事で落ち込んだり、腹を立てたりしているのがどれほど馬鹿げたことなのかを理解することが出来る、と私は思います。

彼らのためにも、まずはこの現状を確認し続けるということが大事ですね。

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