さぁ、今回は日本語のお勉強をしようではないか!
東京都の小池都知事やマスコミなどで使われ始めた「オーバーシュート(overshoot)」。
新型コロナウイルスでの「感染爆発」の意味で使われているこの単語だが、本来このオーバーシュートはそういう意味で使われていないのだ!
今回はみなさんに正しいオーバーシュートの意味をしっかり覚えてもらいたいと思う( ̄^ ̄)ゞ
thumbnail photo by KyodoNews
英単語のオーバーシュート(overshoot)の意味とは?
まず事の発端は、私のアメリカ人の友人が、東京都の小池都知事が会見で発した「オーバーシュート」について言った言葉だ。
「ねぇ。……オーバーシュートって日本語では感染爆発みたいな感じで使ってるけど、英語ではそういう使い方はしないよ」
その会見動画というのがこちら(;・∀・)↓
何事も調べてみないことには納得のいかない私は、英英辞書でまずはこの英単語『overshoot』の意味を調べてみた。
ロングマン現代英英辞書にはこう記してあった。↓
①to accidentally go a little further than you intended
(偶然に意図していたよりも少し先に進むこと)
「The plane overshot the runway and plunged into a ditch.」
(飛行機は滑走路を行き過ぎ、溝に突っ込んだ。)
②to spend more money than you had intended
(意図していたよりもお金を使うこと)
「The budget deficit will probably overshoot its target of 5.8 percent of GDP.」
(財政赤字はGDPの5.8パーセントという目標をおそらく超えるだろう。)
例文引用:LONGMAN
アメリカ人の友人曰く、一般的な日常英会話では、飛行機の着陸やゴルフのショットが行き過ぎた場面などで一番『overshoot』を使うのだそう。
専門用語のオーバーシュートの意味とは?
では、お次は本題の専門用語としての『オーバーシュート(overshoot)』の意味を話していく。
1.証券用語
証券用語としてのオーバーシュートの意味は、
有価証券価格の行き過ぎた変動
というものになる。簡単に言うと、株式相場が大きく動きすぎたこと。オーバーシュートの後は反転して妥当な価格に戻る傾向にある。
「砲弾が目標を超えて行き過ぎる」ということを語源にこの様に使われているという。
オーバーとつくが、買われ過ぎだけでなく売られすぎの時にも証券業界ではこの用語を用いる。
2.制御工学
実はオーバーシュート(overshoot)はもともとこの制御工学の言葉で、その意味は、
目標値に収束していく減衰振動で測定値が目標値を超えること
となる。
日本のロボット研究者で、東京工業大学博士の梶田 秀司氏(Shuuji Kajita@s_kajita)が、制御工学用語でのオーバーシュートについてこうツイートしてくれている。↓
photo by @s_kajit
日本が使っているオーバーシュートの意味は、制御工学で使われている意味とかけ離れているのだ!
新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が使い始め、ニュースで頻出する「オーバーシュート(爆発的患者急増)」なる用語に対する違和感をまとめた図です。 #オーバーシュート pic.twitter.com/3Amra7Ojmg
— Shuuji Kajita (@s_kajita) March 23, 2020
冒頭で私のアメリカ人の友人も話していたように、海外では新型コロナ関連で『オーバーシュート(overshoot)』という言葉は「爆発的感染者の急増」という意味で使われていない。
要点は2つです。
(1) 海外のCOVID-19関連ニュースで、overshootという言葉は爆発的患者急増の意味では用いられていない
(2) オーバーシュート(overshoot)は、制御工学をはじめ様々な分野で用いられる。しかし今回の用法は著しくかけ離れた現象を指している#オーバーシュート— Shuuji Kajita (@s_kajita) March 23, 2020
BBC特派員であるルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ氏も、日本の政治家やマスメディアがオーバーシュートというフレーズを新型コロナウイルスの「感染爆発」として使っていることに疑問を呈している。
Japan – the only place in the world using the English phrase “over-shoot”. What does it mean?
— Rupert Wingfield – H (@wingcommander1) April 5, 2020
「『オーバーシュート』という英語フレーズを世界中で唯一使用する国、日本。いったい何の意味なんだ?」
いやほんと、誰が言い出したんだろう?
3.感染症疫学
最重要となる感染症疫学でのオーバーシュートの意味は、
免疫獲得者数がアウトブレイクを防ぐ最低限獲得者数を超えている状態
となる。少し専門的な回りくどい言い方になってしまうし、わかりやすく説明するのは専門家ではない私にとっても難しい。とにかく、オーバーシュートの意味は
「爆発的感染者数の増加」という意味ではない
ということだ!
オーバーシュートではなく感染爆発を使おう
それにしても、いったい誰が「オーバーシュート」なんて言い始めたのだろう?正直、東京都の小池都知事説はかなり濃厚だ。
クラスターとかロックダウンとか、小池都知事は横文字大好きだからなぁ。。。
そんな横文字のオンパレードに、現・防衛大臣の河野太郎氏もツイッターでこうつぶやいている。↓
クラスター 集団感染
オーバーシュート 感染爆発
ロックダウン 都市封鎖
ではダメなのか。なんでカタカナ?— 河野太郎 (@konotarogomame) March 21, 2020
私ははっきり言って河野氏に同意だ。「集団感染」「感染爆発」「都市封鎖」なら、日本語としての誤解もないし、わかりやすい。
おしゃれ感や知性が出るからと考えてカタカナ英語を使っているのであれば、それは控えたほうがいいだろう。
国民に分かりやすく伝えるのが、政治家やメディアの勤め。
そこのところ、何卒よろしくお願いしますm(_ _)m